磁石に関する用語

当サイト及び磁石に関する記述等で使用される用語と説明を掲載しています。

用語と説明

磁石(マグネット)

磁石には永久磁石と電磁石がある。単に磁石と言えば永久磁石を指す場合が多い。磁石の機能は空間あるいは空隙(ギャップ)に磁力を与えることで、その空間が活用される。

磁力線

磁石のN極からS極に向かって流れる仮想の線のこと。紙の上に置いた砂鉄が磁石によって出来る線状の模様でイメージできる。イメージするための言葉のため、大きさや単位はない。

磁束(フラックス) / 単位:Φ

磁力線が束になって集合した領域の大きさを言い、単位がつく。

磁極 / 単位:N、S

磁性体から磁束が空間あるいは空隙に漏れる面をN極、漏れた磁束が磁性体に戻る面をS極と言い、N極と S極を合わせて磁極と言う。N極とS極は必ず対で存在し、N極あるいはS極が単独では存在しない。

磁束密度 / 単位:B

単位体積当たりの磁束を言う。磁束Φを面積Aで割り算した値となる。

B=Φ/A

表面磁束密度 / 単位:B

着磁された永久磁石の表面の磁束密度を言う。一般にホール素子という磁気センサで測定されるが、磁気センサの表面への当て方などにより値が異なる場合があり、注意を要する。

磁力線磁束の概念

磁界(=磁場)/ 単位:H

単位面積当たりの磁束を言い、磁束密度と同じ内容であるが、空間や空隙などの場の大きさを表す時に使い、磁束密度と区別して用いる。

着磁

永久磁石に飽和まで磁界をかけて、永久磁石の機能を発揮させること。磁化するとも言う。永久磁石の製造工程の最後の工程で行われる。

磁化 / 単位:J、M、I

動詞で”磁化する”は着磁することと同じ意味である。磁化する時の磁界の強さを磁化力とも言う。名詞で”磁化”または”磁化の強さ”は、着磁された永久磁石固有の単位面積当たりの磁束を言う。磁気分極とも言う。

脱磁(=消磁)

着磁された磁石の磁力をなくすこと。

残留磁束密度 / 単位:Br

永久磁石を飽和まで着磁した後の磁石に残留する磁束密度を言う。永久磁石材料の磁気特性を表現する1つである。

保磁力 / 単位:Hc

永久磁石の保磁力(Hc)は2通り表すことができる。1つは着磁された磁石の磁束密度を”0″にするための磁界の強さを言い、単に保磁力(記号はHcB)と呼ぶ。もう1つは、磁石固有の値である磁化の強さ(磁気分極)を”0″にするための磁界の強さを言い、固有保磁力とか真の保磁力(記号はHcJ)と呼ぶ。永久磁石材料の磁気特性を表現する1つである。固有保磁力(HcJ)は、磁石の着磁性や耐熱性の目安になることが有る。

最大エネルギー積 / 単位:(BH)max

減磁曲線上の磁束密度と磁界の強さの積が最大となる値を言う。永久磁石の磁気特性を表現する1つであるが、一般には永久磁石材料の強弱を表す代表値となる場合がある。

減磁曲線

横軸に磁界の強さ、縦軸に磁束密度をとった時の永久磁石の履歴曲線(ヒステリシス曲線と言う)の第2象限の曲線のこと。永久磁石の磁気特性を図で表現している。

永久磁石の磁気特性

パーミアンス係数 / 単位:pc

永久磁石から空間あるいは空隙に漏れる磁束の漏れ易さとしてイメージできる。パーミアンス係数が大きいほど多くの磁束密度が空間に漏れる。パーミアンス係数は永久磁石の形状や着磁の仕方あるいは磁気回路の方案などに依存し、磁石材質とは関係しない。減磁曲線上では、パーミアンス係数=磁束密度/磁界の強さ〔pc=B/(-H)〕で表すことができる。

パーミアンス係数と磁石形状との関係および磁束密度への影響
形状との関係

減磁

着磁された永久磁石の磁力が、高温にさらされたり、外部から着磁とは逆方向に磁界がかかったり、あるいは腐食したりするなどして弱くなること。

経時(経年)変化

時間(年数)とともに永久磁石の磁力が変化すること。一般には磁力は減磁していく。

キュリー温度 / 単位:Tc

永久磁石の磁力が完全に失われる温度を言う。キュリー点とも言う。

温度係数 / 単位:α,β

温度変化に伴う磁気特性の変化率で、1℃当たりの変化率(%/℃)で表す。一般には、残留磁束密度および保磁力の変化率を表し、前者をα、後者をβ の記号を用いる。

SI単位

国際単位として使用を義務づけされている。長さをメートル(m)、質量をキログラム(kg)、時間を秒(s)で表すMKS単位系が基となる。

CGS単位系

長さをセンチメートル(cm)、質量をグラム(g)、時間を秒(s)で表現する単位系である。CGS単位系を単独で使用することは禁じられており、使用する場合はSI単位系と併記する必要がある。

ガウス / 単位:G

CGS単位系の磁束密度を表す単位。

テスラ / 単位:T

SI単位での磁束密度を表す単位。 1T=10,000 G

エルステッド / 単位:Oe

CGS単位系の磁界の強さを現す単位。SI単位ではアンペア/メートル(A/m)となる。 10e=103/4π A/m=79.6 A/m

ガウスメータ(=テスラメータ)

ホール素子(半導体でできた代表的な磁気センサ)に誘起された起電圧を測定する計器で磁束密度が直接測定できる。

サーチコイル(=探るコイル)

導線を巻いたコイル内を貫通する磁束の時間的変化分を測定する一種の磁気センサで、フラックスメータとともに磁石製品検査に使用されることが多い。

フラックスメータ

サーチコイルに誘起した起電圧を測定する計器で、サーチコイル内を貫通する磁束の変化分が測定される。

吸着力 / 単位:F

磁石が磁性体を吸着する力で、吸着面の面積と磁束密度の二乗に比例する。

磁気回路

永久磁石と鉄片(ヨークと言う)を組み合わせて、磁束を所定の空間にあるいは空隙に集中させるようにすること。

磁気回路の例
磁気回路

継鉄(ヨーク)

永久磁石との磁気回路を構成する純鉄あるいは純鉄に近い鉄でできた部品。永久磁石から発生する磁束は空気中よりヨーク中を通り易い。 ※ヨークについて(リンク)

等方性磁石

どの方向に着磁しても同じ磁気特性を示す磁石。着磁の方向は自由に選べる。

異方性磁石

ある方向にのみ着磁すると強い磁気特性を示す磁石。それとは別の方向に着磁してもほとんど磁気特性を示さない。従って着磁は異方性の方向に行う必要がある。異方性磁石の方向は結晶の方向に起因している。

硬質磁性材料

永久磁石材料のことである。ハード磁性材料とも言う。

軟質磁性材料

ヨークなどに使われる鉄やモーター、トランスなどに使われるケイ素鉄、磁気シールドなどに用いられる鉄‐ニッケル合金(パーマロイと言う)などで磁石に吸着される側の材料である。その保磁力は永久磁石の保磁力と比べ極端に小さく、むしろ小さいほど良好な材料である。ソフト磁性材料とも言う。

強磁性体

硬質磁性材料(永久磁石)と軟質磁性材料のことで、磁石に吸着される材料である。

非磁性体

磁石に吸着しない材料、例えば銅、真鍮など、また鉄系の合金でも18%Cr-8%Niステンレス(SUS304)などがある。